あいえる協会活動ブログ

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【ピア・エンジン】コロナ禍は障害者問題を見にくくするのでは?!

あいえる協会 2020年12月18日

 コロナウィルス感染拡大に翻弄される現代人の生活は、その生活様式を一変させられました。緊急事態宣言が発令され、マスクやフェイスシールドの着用が義務のようになり、ステイホームが叫ばれ、三密を避けてソーシャルディスタンスを守る生活を強要されました。

 このような生活は、私達重度障害者にどんな影響を及ぼしているのでしょうか。その影響は、障害の違いによって千差万別です。私のような重度身体障害者に限って考えてみたいと思います。

 

 ステイホームが叫ばれていますが、外出が元々ほとんど出来ていない入所施設の重度障害者にとっては、何十年も前から毎日がステイホームです。むしろこのコロナ渦の時こそ、色んな社会的制限があり、自由な外出が出来ていない重度障害者の人権問題を、この社会により一層アピールしていきたいものです。

 

 人に出会うことが奪われてしまうステイホームの生活は、重度障害者にとっては日常生活ですが、とても差別問題が見えにくくなる怖さがあると、私は思っています。

 

 ステイホーム生活では、生活のあらゆることをオンライン文化が発達し、何でもかんでも出来てしまいます。例えばオンライン会議が私の場合でも増えてきました。大阪にいながら家から外出せずに東京での会議に参加できるのです。交通費もいらないし、雨の日の色々な心配事もなく、階段や段差の心配もなく、「なんて便利~!なんて楽ちんなの~!」と、感動して喜んでいる私がいます。

 

 でも、こんな私は逆に怖さを最近感じるようになりました。それは、重度障害者が外出しなくても、生活をある程度ならエンジョイ出来る世界が広がっていくという怖さです。

 

 重度障害者が外出しなくなると、車椅子障害者が使いにくい街づくりの段差が多い道や、お店の不便さなどが、障害者と健常者ともに、どちらも気づくことが出来なくなるのではないでしょうか。障害者は街作りなんて関係なくなり、道行く人からの視線や差別的な言葉を受けることもなく、障害者差別の問題にぶち当たることもなくなり、自分が障害者だと気付けるチャンスもなくなるのではないでしょうか。

 

 また、色々な障害者との出会いがなくなった健常者は、障害者が同じ社会の中に生きているということを忘れてしまいます。その結果として、出生前診断で障害児と分かった時に、平気で中絶してしまう結果になるのではないでしょうか!!!

 

 これこそが私達障害者が抹殺されていく社会であり、優生思想そのものです。

 このような怖さに障害者の私たちはどう立ち向かっていくのか!が今問われているのだと思います。

 

 便利になったオンライン生活は、驚くほど色々なものがあります。オンラインを利用したテレワークやリモート会議、スカイプやズームを使って日本国内だけではなく、世界中の人達とつながって交流が出来たりします。また、リモート面接やリモート講座や色々な授業、ヘルパー講座などもリモートで資格が取れるようになってきています。更にリモート操作で寝たきりの重度障害者でもベッドに居ながらにして、分身ロボットを使って世界中を旅したり、いろいろな企業に就職して雇用され給料をもらえるという雇用形態がどんどん広がってきています。このように重度障害者でも雇用される社会はとても魅力的です。

 

 でもそれは、ベッドの上だけの疑似体験なのです。それは、同じ職場の人達に自分の体つきを見てもらったり、顔色を見てもらったりすることもありません。変形した障害者の体や言語障害があるゆえに、つばが飛んできたり、その人の体臭なども感じることができません。変形した障害者の手と握手した時、その手のぬくもりと冷たさなども感じることがありません。このような人間臭さこそが人間にとって大事ではないでしょうか。オンライン時代に失っていくもの、そんな人間臭さが障害者問題につながっているような気がします。人間臭さを、大切にした人間関係作りこそが、今後の障害者問題を伝えていくキーワードだと思うのです。それは、知的障害者や精神障害者の問題にもつながっていると思います。

 

 そして、忘れられていく障害者も使いやすい街つくり運動も忘れずに進めていきたいものです。

 今後も皆さん、もう一度障害者もそよかぜのように街に出よう!と呼びかけたいですね!