• 2016年度活動総括
  • 2016年度活動総括

     

     

     2016年度は地域展開として日中活動(ピアエンジンやウィル、ライフ)が中心となり地域活動を積極的に展開していき、また各プロジェクトを設けて各部署が横断的に連携して講演活動や施設訪問等の取り組みを進めてきた。

    特に地域との関係づくりの取り組みはこれまで立ち遅れてきた点もあり、これらの活動は大きな成果となっている。

    また法人の主要テーマであった入所施設からの地域移行取り組みの再興に向けて、再び施設訪問にも取り組み始めたことは前進と言える。

    一方、プロジェクトを活性化することで、各部署の本来業務が手薄になってしまう面もあった。

     

     またこの間、相談支援事業などから地域での虐待ケースや緊急ケースの受け皿が必要となり、あいえる協会では従来の身体障害者者や重複障害者だけでなく、重度知的障害者、高次脳機能障害者の受入れも進めるなど、新たな一歩を踏み出してきたと言える。

    しかし、従来の身体障害者を主とした支援、エンパワメントとは違った知的障害者等の生活づくり、環境づくり、関係調整等の支援に追い付いていない面があり、「対症療法」に陥るなど支援でつまづく場面もでてきた。

     そのような中、支援においては当事者のニーズを更に掘り下げて検討することが必要となり、特に知的障害者等への支援についてはニーズの「掘り下げ会議」を設け、その人の主要テーマ(ニーズ)を明確にし、それを軸に部署間での連携を深めながら支援を組み立てていく流れを作り始めた。

     

     これまであいえる協会では、重度障害者の地域移行や緊急ケースを受け入れられる地域生活の支援機能をもつために、GHや日中活動など次々と新たな事業を設けてきた。基本的な骨格や基盤は形作ることができてきたが、一方で、新たな事業を作ることに追われ、人材育成等の面でも「各部署まかせ」となる弊害も出てきたと言える。

     その中で、身体介護中心の考え方に引きずられ、自己選択・自己決定の捉え方の履き違いが出る等、いつのまにか理念や本来業務のあり方にもズレが生じてきた。

    ともすれば、「職員は支援と事務」「ヘルパー・支援員は介護」というように機械的に分かれる体制となり、職員が現場に入って新人を育てていくという機能が弱まっている面も見受けられた。

     また、組織運営、課題検討も各部署まかせとなりがちで、部署で課題が起きてもその中で解決できず、本部も課題を吸い上げられず、問題が明らかとなってから対応に追われるなど、これまでの組織体系の課題も浮き彫りになってきた。

     

     この間、様々な課題が現れてきたことから、2016年度はその背景・原因を探ることに力を入れ、法人が歩んできた経緯や成果もふまえながら、今後に向けて、支援や活動、組織全般にわたる改善に向けて取り組みはじめた1年であった。

     

    1.理念面
    ・当事者主体、自己選択・自己決定という理念を、「当事者まかせ、当事者が望むまま」と捉えてしまったり、エンパワメントの考え方を「本人をどのように変えていくか」と履き違える傾向が出てきている。
    ・また、同性介助の考え方から個々の障害者との関わりが同性職員のみになりやすく、体制も男女で分かれ、全体状況を把握できなくなったり、あるいは1:1の身体介護中心の支援体制により、現場のヘルパー・支援員まかせとなり、職員が当事者と共同して仲間づくりや生活づくりを進めようとする意識も薄れてきた面があると言える。
    ・これらはこれまで大事にしてきた理念、考え方が、長年の取り組みの中で、また関わるスタッフが増える中で、徐々にずれてきたとも言え、そのズレが支援や活動、体制のあり方にも歪みを生じるなど影響を及ぼしてきたと考えられる。今一度、障害者運動の歴史から培われてきた理念を捉え返し、ズレや歪みを修正していくことが求められる。

     

    2.活動面
    (障害者運動)
    ・この間、ともすれば運動が「一部の者だけの活動」となり、行政交渉も実態や制度の課題を全体で共有しきれなかった面があった。これらは主に当事者主体の考え方から、交渉では当事者が発言していく=職員は受け身になりがちとなってきたことがあげられる。
    ・そのため2016年度から、交渉に向けた取り組みとして、ピアエンジンで当事者向けの学習会をもち発言シミュレーションを行ったり、職員向けには全体研修の中で情勢や運動方針、交渉課題について学習会を実施し、交渉当日は当事者、職員ともに活発に意見を出す形を作り始めることができた。

     

    (当事者スタッフ育成)
    ・大学講演、小・中学校交流、施設取り組み、地域イベントなど企画ごとにプロジェクトを設け、当事者それぞれが講演活動、交流取り組み等の役割を持ち、全職員が当事者と協働する機会を作ることで、一定のスキルアップにつなげてきた。今後、更に職員と当事者の共同のあり方、求められるスキルを明確にしながら、その育成に力を入れていきたい。
    ・新しい世代の当事者スタッフの育成を目的として、何をどのように伝えていくべきか、ピアエンジンで整理を行ってきたが、その講座の開催までには至らなかった。
    ・ピアエンジン事務所をマンションの一室から、別の物件の1階店舗に移転し、当事者が活動しやすい環境を作ってきた。

     

    (施設取り組み)
    ・豊生園のレクリエーションとILP取り組み、光園への外出取り組み、住吉区自立支援協議会では区内からの施設入所者の訪問活動等に積極的に取り組み、職員や当事者メンバーが施設を訪問する機会を増やし、施設とのつながり作り、施設問題への意識化につなげてきた。

     

    (地域展開の取り組み)
    ・各プロジェクトを作り、当事者が中心となった地域イベント、小・中学校交流等を行い、地域展開の活動を定着させてきた。同時に日中活動事業所における夏祭り等の地域企画や製品販路の拡大など、積極的に地域とのつながりづくりに取り組み、地域の理解や協力関係等を深めてきている。
     一方で、各プロジェクトは部署をまたいで体制を作ったため、部署同士の打ち合わせの時間が多くかかり、各部署の本来業務にも支障が出るようにもなってきた。
    ・住吉区自立支援協議会では他団体と連携して、毎月の相談会(障がい者の暮らし何でも相談)や各種部会、研修会などに取り組むとともに、今年度から新たな部会として、GH部会(GH紹介パンフも作成)や働くネット、子ども部会などを設置し、施設訪問活動も他団体と一緒に取り組むことができた。

     

    3.支援面
    (支援計画)
    ・この間、個別の支援計画の作成においては、進捗状況の加筆に追われ、支援計画の中身そのものが形骸化する傾向や、当事者の生活課題ばかりに着目しがちになり、エンパワメントの考え方を狭く捉え、ともすれば「本人をどう変えていくか」という視点に陥る傾向も出始めている。そうした中で、真のニーズを見極めることができず、現場では「対症療法的な支援」になり悪循環に陥ったり、部署同士も視点や支援方針がすれ違うなどの弊害も現れてきた。
    ・そうした状況の改善に向けて、まず本人ニーズの「掘り下げ会議」を設け、支援担当者間で真のニーズをしっかりと掘り下げた上で、支援計画会議にて全体で支援方針を共有し、各部署と一緒に支援の進捗をチェックする体制を作ってきた。また、この間、他団体や専門家から支援の視点や実践のヒントを学ぶ機会も設け、日々の支援に採り入れてきた。
    ・表面的に現れる課題等、「現象面」だけに捉われるのではなく、本人の気持ちや状況からその課題の背景・原因を掘り下げながら、そこから導いた「主要ニーズ」を基に支援の実践を組み立てようとしてきた。そのことを通じて、各部署で支援を立て直し、徐々に個々の生活に成果も現れ始めている。しかし、まだ全体としては「本人がいかに介護を使うことに慣れていくか」という身体介護中心の考え方から、「本人が安心できる環境づくりや仲間づくり、生活づくり」をどう進めていくかということに慣れていない面があり、今後、より意識的に取り組み、法人全体に浸透させていく必要がある。

     

    (日中活動の充実)
    ・この間、法人全体で日中活動事業所を支える体制を作り、また長期休暇に対する当事者の不安の解消と活動づくりのため、長期休暇中の日中開所、土・日の地域イベントへの参加体制作りなどに取り組んできた。
    ・個々の余暇活動の充実に向けては、当事者スタッフから様々な地域企画を紹介すること(ガネアカ企画)などを行い、余暇の楽しみ方の幅を広げるきっかけを作ってきた。
    ・当事者の地域生活をより豊かにしていくためには、介護を利用して日々のルーティンをこなすだけでなく、余暇活動を通じて楽しみながら経験や仲間をいかに広げていくかが重要であり、更に重視して取り組んでいく必要がある。

     

     

    4.組織運営面
    (職員体制)
    ・職員の体調不良・退職、育児休業などが続き、職員募集をするもなかなか確保できない中で人手不足の状態が慢性的に続いてきた。特に女性ヘルパー不足が顕著で、不足分を女性職員全体でカバーせざるを得ず、ともすれば長時間の労働を強いてしまっている。
    ・この間「部署まかせ」の組織運営に陥る中で、各部署において職員が現場にあまり入らなくなる傾向も見受けられ、職員が現場の状況や課題を把握できないまま、問題が発覚してから対応に追われたり、現場スタッフへのアドバイスが不足する中、課題を抱え込んでしんどくなるなど様々な弊害を生じてきた。これらは職員が支援計画を組み立てていくという立場にとらわれるあまり、「職員=支援や事務」、「支援員・ヘルパー=現場の介助」といった縦割り的な捉え方に陥ったことが原因と考えられる。
    ・また職員の不足から2月に職員異動を行い、今後、より意識的に各スタッフの経験やスキルアップの取り組みにつなげようとしてきているものの、一方で職員の部署異動を繰り返す中で、それぞれの部署の制度や事業に精通した人材の育成ができず、支援区分の有効期限切れや請求ミスなどの問題も起こった。

     

    (研修体制)
    ・大阪市・大阪府との交渉に向けて、これまでは当事者向け学習会は行ってきたが、今回初めて職員向けの学習会を開催し、交渉の場での活発な発言につなげることができた。この交渉に向けた学習会では、各部署の管理者が主となって各課題を学び、全体化することでスキルアップを図ってきた。
    ・職員全体会をはじめ全体研修を計7回、中堅職員の学習会も開催するなど、支援の掘り下げや総括の視点・手法について浸透を図るとともに、全体で議論する場を作り、法人全体の課題総括・方針を共有し、スキルアップを図ってきた。
    ・一方、情報提供や制度学習等の人材育成が各部署任せになってしまい、部署や個人によってバラツキができてしまった。
    ・また、身体障害者中心の介護・支援がこれまで主であったため、ヘルパーや支援員の身体介護の研修、スキルアップには取り組めてきたが、知的障害者等の支援、環境づくり、生活づくり等についてはまだまだ浸透できておらず、今後、研修に力を入れていく必要がある。

     

    (組織体系の見直し)
    ・組織体系ではこれまで、「各部署会議→本部会議→案づくり会議(執行委)→運営委員会→理事・評議員会」といった体系を作ってきたが、各部署での課題が案づくり会議に上がってこず、本部としても課題を吸い上げられず、問題が発覚してから対応するなど後手後手にまわる弊害も出てきた。その改善に向け以下のように組織体系を見直してきた。
    ・各部署会議は報告中心の会議になりがちであったことから、「活動・支援・組織運営」の3つのテーマの会議に分けて、各会議の目的・議題を明確化してきた。
    ・日中活動、グループホーム、介護派遣、相談支援の事業毎に「事業会議」をもち、各部署管理者と本部が一緒に部署の課題を拾い上げ、検討していく場を設けた。
    ・本部会議、運営委員会では各部署の課題を確実に集約し、総括・方針を明確化し、法人全体で課題を解決していく仕組みとするために、「各部署会議→事業会議→本部会議→運営委員会→理事・評議員会」というサイクルに改めてきた。
    ・支援計画づくりについても「掘り下げ会議→本部会議→支援計画会議→運営委員会」というサイクルに改めてきた。
    ・また、相談支援事業を行う「まいど」は区相談支援センターとしての役割を担い、地域の当事者や家族、他団体との連携などの取り組みが主となり、法人内で他部署との関係がもちにくくなってきたことから、まいどの法人内での位置づけと役割を再検討する必要性も出てきている。

     

    (本部体制)
    ・本部職員が管理者と兼務せざるを得ず、また本部職員が各部署課題を見極める視点や力がまだ十分ではなく、本部機能としては脆弱であった。
    ・また、本部職員が定年及び育児休業に入ることもあり、本部体制の再編を行い、本部機能強化、専業化に向けた準備を進めてきた。

     

    (総務体制)
    ・この間、経理責任者の退職に伴って新たに設けた経理部門2名体制が定着してきており、これまでホップスタッフや本部が兼務してきた業務の一部を移行することができてきたが、今後、総務部門の管理体制については検討が必要となっている。
    ・各部署の収支状況等、運営の維持や職員の処遇について、振り返る場面が少なく、特に収支状況では人件費率の多さが続いており、各部署でも振り返る場面が必要となっている。