あいえる協会活動ブログ

活動内容から日常の出来事まで、いろいろな「あいえる協会」をお伝えします!

脳性麻痺、夢の浪漫記!~四国一周の旅~ 旅立ち

あいえる協会 2024年10月8日

この記事は私が書きました けんぴょん

 

 私は、脳性麻痺者だ。普段は車いすで移動している。

 腰が曲がり、歩きは不安定で時々転倒する。

 若い頃は、製麺所で働いており、健常者に交じって力仕事や車での配達の仕事をしていた。

 しかし40歳頃、無理が祟ったのか、二次障がいになり、車いすを普段から利用するようになり、製麺所を退職した。

 製麺所で働いていた頃は、車が好きで、休日はよくドライブにでかけていた。

 3度の飯よりも車の運転、音楽、たばこさえあれば何もいらない程だった。

 それは、健常者に負けないように無理をして仕事をしてきたことの反動だったのかもしれない。

 車を運転しているときは、私の操作次第で車が動き、そのスリルと緊張感が、仕事のしんどさや嫌な事を忘れさせてくれたからだ。

 障害者の支援に関わることになった頃は、障害者の制度や権利、支援等の事を覚えることで考える余裕もなかったので、休みの日にすることは、美味しいものを食べに行ったり、パチンコ屋に行くくらいしかなかった。

 でも、60歳を過ぎた頃に、もう一度行くあてもないドライブがしたい、車中泊をしたいという衝動に駆られて、年に一、二回レンタカーを借りて、昔よく行った場所を、運転感覚が鈍らないようドライブしていた。

 運転中は安全運転を心がけ、何の問題もなかったが、いざ車を降りてコンビニやトイレに行く時が大変だった。歩行距離や体の負担を抱えていたからだ。

 そして、65歳の定年を迎える今、未だに車への執着心があり、昨今ブームになっている車中泊をしながら日本を一周する事を、大きな夢とし、目標としているのだ。

 もともと私は、家に居て何かをするというインドア派ではなく、どちらかというとドライブしたり、銭湯巡りをしたり、釣りをするというアウトドア派であったと思う。

 

 ある日、職場の先輩と“定年後の車中泊・日本一周”について話した。

 話の中で先輩から「できるか?」と言われたことが、私を奮い立たせた。

 確かに障害者である私にとって、車中泊はそんな生易しいものでないことは、理解できる。

 健常者でさえ、トイレやお風呂や洗濯、食事、就寝等の困難があることを、Youtubeなどで訴えていた。

 最近では、各地に車中泊場も増えてきて、ごみの処理や食料、日常生活用品、お風呂、コインランドリー、電源供給等も備わっているが、障害者が利用することは考慮されていないのが現状。

 そこで“諦めないのが無知な私”というより、ドライブがしたい車中泊したい、色んな風景や空気、雰囲気、そして色んな人と出会いたいという気持ちになっていった。

 『障害者だから』という理由で諦めてきた事も沢山あったから尚の事、人生の集大成として自分が納得する生き方や“挑戦”してみたいという気持ちが大きくなっていった。

 そこで、ゴールデンウィークを利用して、亡き親父の故郷、四国一周を、5泊6日ですることにした。

 “車中泊”とは程遠いホテル宿泊という形であるが、自身の運転、集中力や気力、体力の確認のためと、障害者にとってどの様な課題があるのかを確認すために挑むことにした。

 車は、電動車椅子も積み込むことのできる軽四貨物(ハイゼットカーゴ)を借りる事にした。

 ゴールデンウィークなので、レンタカーの予約、ホテルの予約などは、早い方がいいと思い、計画を4月上旬に作成した。

 最近は本当に便利なもので、ネットを利用してホテルを検索すると、金額や内容、口コミなどの評価が出てくる。

 (口コミは健常者目線の評価等で参考にならないので、読み飛ばしているが…)

 ホテルの写真を見たら、入り口の段差や部屋の間取りなども出てくる。

 民宿など安い方が良いのだが、入り口の段差やエレベーターの設備もなく、洋室が多かったので、ホテルを選択、予約もネットですることができた。

 経路やそれに掛かる時間も全てネットで把握できるので、計画を見ながらホテルのチェックインの時間を選択して、大阪→香川→愛媛→高知→徳島の順に、宿泊するホテルを予約した。

 

 走る距離は、無理のない範囲で、一日150km~200km前後にした。

 20代の頃は、一日3~400kmなんて平気だったが、流石に60代にもなると勝手が違うし、不慣れな道を走るので、大事を取ることにした。

 

 当日まで、何度も計画とホテルの予約日時を確認した。

 正直、ワクワク感より不安の方が大きく、初めての場所なので、事故や故障等への不安がどんどん膨らんで挫折しかけた。

 出発前日の4月27日は、いつもより体調を整え、持ち物の確認。

 特に、電動車椅子用充電器を念入りにチェックした。

 軽量だがかさ張り、リュックの3分の1以上を占めてしまう程だった。

 ダメだったらすぐに帰ればいいと、開き直る気持ちも芽生えてきた。

 そして4月28日、レンタカー屋に行き、車椅子を積み込み、12時に出発した。

 

つづく