あいえる協会活動ブログ
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ヘルパーさんと地域で❝自分らしい生活❞を!~藤本さんの❝好き❞に迫ってみた!!~
あいえる協会 2022年2月14日
障害当事者の方の“好き”や“楽しい”を実現させるために、実際にヘルパーさんがどのようなことをしているのか??をモットーに、藤本さんの生活を取材していく今年度の連載。
前回は藤本さんの魂を込めた取材活動、犬鳴山への登頂チャレンジをお送りしました。
今回は、犬鳴山への熱い想いとリベンジの意欲に燃えた、二度目のチャレンジの模様をお届けします!!(文責:中野)
前回の取材が残念な形に終わってしまい、本人さんもさぞや落ち込んでいる…かと思いきや。
「一度や二度の失敗をおそれるなと私は声を大にして言いたい!私は行くよ、どれだけ険しい道のりだったとしてもね!!」
熱い想いを再確認すると共に、“藤本さんの名言”がまた一つ、この世に産声を上げたのでした。
☆旅の始まりは入念な下準備から☆
2度目の犬鳴山挑戦にあたり、前回の反省点も踏まえて、下準備をしっかりと進めていきます。
まずは、1回目に同行してくださった事業所さんに、今回も同行して頂けるか依頼すると、「いいですよ!!」と、前回と同様に快く依頼を受けてくださいました。
ヘルパーさんの確保ができたので、次はしおりづくり。
前回の未完に終わってしまった旅行の振り返りをまとめたものと、前回のしおりを元に、今回も藤本さんの思いをひとつずつ聞き取りし、心配の種を一つずつ潰してしおりを仕上げていきます。
前回の一番の鬼門となったのが、“介護タクシーが来なかった”という問題。
この問題を解決するために、今回は前回より丁寧に電話かけをしていったのですが…
「もしもし、犬鳴山に行くために介護タクシーを使いたいのですが、車いすのまま乗り込める福祉車両はありますか?」
『申し訳ないですが、車いすごと乗れる福祉車両は当社では取り扱いが無いですね』
福祉タクシーにもかかわらず、そもそも車いすごと乗れる車両を取り扱っていない会社がなんと8件!
泉佐野市の福祉タクシー会社で検索したリストの半分以上に電話をかけてみたのですが、ほとんどの会社から同じ回答が返ってきたので、この地域では福祉タクシーは障害者の方など車いすに乗ったままの人の外出に対して、あまりなじみがないのだなぁと実感させられました。
暗雲立ち込めてきたタクシー探し。
最後の手段と思い、前回のタクシー会社にも連絡してみると…
『うちでは車いすのまま乗り込めるタクシーもご用意していますよ!!』
前回タクシーを予約したのに来なかった事に一抹の不安を感じながらも、前回の一件を担当者に伝え、乗り込む予定になる車種なども確認したところ、
『普通の車いすなら十分乗り込める大きさの車をご用意します!』
との確約を頂き、前回に引き続きこのタクシー会社で予約を取ることに決めました。
タクシー会社の価格設定的に、バス停から犬鳴山までの短距離でタクシーを使ってもいいですが、初乗り料金が高めに設定されている為、日根野駅からタクシーに乗ってもバス代に少しプラスの金額で行けると教えてもらい、今回はバスは使わず、電車とタクシーで行くことになりました。
担当者様の名前やタクシーの車種もばっちり確認し、いざ、犬鳴山へ!!!
☆いざ、犬鳴山へ☆
当日は前回の振り返りを踏まえ、藤本さん自らスムーズな起床と用意を心掛けておられ、10時発の予定より大幅に早く、9時30分に出発することができました。
日根野に向かう電車内、福祉タクシーを待つ間も、犬鳴山に対する熱い気持ちを楽しそうに語り続けておられました。
予定より5分ほど遅れて、聞いていたよりコンパクトな福祉タクシーが到着。
いざ乗り込もう!!と車いすを車内に入れ、スロープを戻しますが、車いすが入り切っていない為、車のドアが閉まらず…何度挑戦しても車の扉が閉まらない!!
結果、車いすのフットレストを折り込み、後部座席ギリギリまで寄せて車いすを押し込み、半ば無理やりではありますが、20分かけてようやく乗り込むことができました。
しかし、狭い空間の中、藤本さんが手を動かすと、あちらこちらに手がぶつかっていました。
運転手の方にお伺いすると、今まで障がいの方の利用は一度もなく、基本的に高齢者が通院で利用するか、一般客を乗せることが多いとの事でした。
運転手の方は元々介護職員をやっておられた方で、とても親切な対応をしてくださり、藤本さんとも積極的にコミュニケーションを図ってくださいました。
険しい山道を揺られること20分強。
ようやく念願の彼の地、犬鳴山に足を踏み入れることがかないました!!!
藤本さんは、しみじみとかみしめるように「来れて良かった」とつぶやいておられました。
降り立った場所は、小さな駐車場とそこに祭ってある仏像、脇の急な傾斜を上がると左手にベンチとトンネル、目の前に仏像、右手には傾斜の強い石段がありました。
一説によれば狼が起源と言われている“狛犬”。
ここ数カ月、オオカミや狛犬について下調べを重ねてきた藤本さんにとって、待望の対面と相成りました。
15時にお迎え予定だったのですが、想像よりも行動できる範囲が狭く、本堂の奥深くまで行くことはかないませんでした。
トイレは急な傾斜の石段の上にあり、お手洗いに行く道のりも厳しい中、およそ3時間ほど取材されました。
途中何度もみぞれが降り、そのたびに小さいトンネルに避難しました。
寒い中でも心がほっこりしたのは、参拝客の方が通りすがりに挨拶してくださったり、若い男性二人組が「車いすで階段を登るの手伝いましょうか?」と声をかけてくださったりした事です。
また、同時刻に参拝に来ておられた方達が下山される際「え?まだここにいたんですか?2時間は経ってますよ、大丈夫ですか?」と心配して声をかけてくださいました。
迎えのタクシーの時間を指定しているので待っていることを説明し感謝を伝えると、「なにか登れる方法考えてあげたらよかったね、ごめんね」と優しい一言をかけてくださり、真冬の寒空の下でしたが人の温かさを感じる機会となりました。
時間が経つにつれて、藤本さんも手を擦り暖を取りながら「今何時かしら」とヘルパーに確認してこられ、さすがに待っていられないので、タクシーの時間を早めてもらえないか、タクシー会社に電話することに。
呼び出し音が鳴った後、通話はできている状態なのに相手からの応答が全くなく、何度か電話をかけるも同じことの繰り返し…一度だけ相手からの反応はあったものの、何を言っているかわからない状態でした。
山の中にいるので電波の関係か…?と思い電話を諦め、約束の時間までヘルパーと二人で待ちました。
やっと約束の時間になり、迎えのタクシーが来たので、会社に何度も電話した旨を伝えると、「休日の電話対応は外国の方が行っており、もしかしたら日本語が理解できなかったのかも…」との返答。
なんじゃそりゃ!!という思いをぐっと飲みこみ、タクシーに乗車を試みましたが、行きと同じく車いすが車に入らない!!
何回やっても、フットレストを上げて折り込んでも入らない!!
ヘルパーから藤本さんに「絶対安全で入れるよう支えるので後部座席に乗りましょう」と伝えると納得してくださり、スイスイ乗り込まれ、とてもいい笑顔で座っておられました。
☆旅の終わりに☆
藤本さんの話やっぱり、行ってみないと分からない所って、まだまだあるんじゃないかしらと思うわ。 小説で狼の出てくるところを書いてるからこそ、行ってみないと分からないことがあると実感したし、私自身は行ってみて、自分の小説の主人公の置かれた環境を鑑みたり、あれ?手塚治虫はこんなところを背景として描いていなかったかしら?と思ったんだ。 みんなにもアドバイスとして聞いてほしいんだけど、人生は冒険だという事。 みんなにももっといろんなことを経験してほしいな!! |
ヘルパーさんの話今回は、寒い中ではありましたが、人のやさしさや藤本さんの新たな発見などもあり、とても楽しい取材でした。 藤本さんの反応が薄かったためお断りしてしまいましたが、参拝客の方が「車いすで登るのを手伝いましょうか??」と聞いてくれたことや、暖かな声掛けがとても心温まる経験になりました。 それと同時にタクシー会社に対して、もしも本当に電話対応したスタッフが外国の方でなにを言っているかわからないから黙っていたという事なんだとしたら、会社的にどうなのかな?と疑問が残りました。 外国人労働者を雇うのであれば、しっかり教育してあげないとお客も本人も困るのでは??と思います。 |
後日、タクシー会社に、大きめの車を手配してくれる予定で、車種も大型車を提案してくれていたのに、当日来た車はコンパクトで車いすが入らなかった旨を伝えると、
「こちらでは“普通”の車いすは問題なく入る車を準備しましたが?運転手からは何の問題もなく楽しく道中を終えたと報告を受けていますよ?」
と、つれない回答が。
また、電話の会話が通じなかったことについては、
「こちらではきちんと日本語の会話のできるスタッフを配置しているのでそんなことはありえないと思いますけどね」
と、当日の状況とは全く違う回答が返ってきてしまい、支援者側としては最後までもやもやの残る顛末となりました。
“普通”とはいったい、どの基準を差すものなのでしょうか。
自分の想定していた結果と違うものを全て“普通ではない”とひとくくりにするのは簡単な事です。
しかし、障害者も健常者も関係なくみんなが生きやすいのが当たり前の社会にしていくためには、自分の中の“普通”の判断基準を一旦取り除いてみることも大切なのではないでしょうか。
そんな思いが社会にも伝わればいいのになと願い、それと同時に、その想いを伝えるためにも、当事者と共に強くこれからも声を上げていけたらと思います。
支援者としては、福祉タクシー会社の対応も含め、今回のチャレンジにも多くのバリアを感じるものとなりましたが、藤本さんは今回の取材に深く満足しておられました。
「今後も毎月一回ぐらいは犬鳴山に行ってみようと思うんだけど、どうかな?」
「藤本さん、毎月行くのは構いませんが、タクシー代を毎回払っているとお楽しみ貯金が減ってしまいますよ?大丈夫ですか?」
「あっそうか!!それはいけないわ!!私には行くべきところがあるんだもの!」
藤本さんがコツコツと溜めている“お楽しみ貯金”。
貯金の目的は、本人さん曰く人生初のお泊り旅行の為。
その旅行先と旅行への懸案事項は…また次年度のお楽しみ☆
今年度は藤本さんの生活を通して、ヘルパーという仕事について皆様に知って頂けたかと思います。
本人さんの行きたいところ、好きな物をくみ取って、一緒に考えたり、提案したり。
外出先で駅のホームが工事をしている、健常者にとってみればたったそれだけのことでも、車いすの方にとっては大きく立ちはだかる障壁になったり。
バリアフリーやユニバーサルデザインが普及してる中でも、実際は現状として知られていなかったり、運転手の方なども知らなかったりするなど、様々な壁にぶつかることも多いかもしれません。
しかしそれも、本人さんにとっても、また私たちにとっても大切な“気づき”であり、“経験”です。
一緒に様々なことを経験できるチャンスと捉え、避けるのではなくあえて問題にぶつかってみれば、世界はほんの少しだけ、みんなが生きやすい社会に形を変えていくのかもしれません。
ホップのブログは次年度も、地域で暮らしている方の生活や、それを支えるヘルパーさんのお仕事に迫っていきたいと思っています。
人生とは冒険である!!!———藤本さん
あなたも冒険のわくわくする一幕に立ち会ってみませんか?