あいえる協会活動ブログ

活動内容から日常の出来事まで、いろいろな「あいえる協会」をお伝えします!

ヘルパーさんと地域で❝自分らしい生活❞を!~藤本さんの❝好き❞に迫ってみた!!~

あいえる協会 2022年1月1日

 新年あけましておめでとうございます!!

 昨年はコロナ禍の中様々なことがありましたが、皆様の協力のもと1年を過ごすことができました。

 本年もホップ一同一丸となり、“どれほど重い障害があっても地域で普通に暮らせる社会”を目指す法人理念に沿って尽力していきたいと思います。

 

 障害当事者の方の“好き”や“楽しい”を実現させるために実際にヘルパーさんがどのようなことをしているのか??をモットーに、藤本さんの生活を取材していく今年度の連載。

 前回は藤本さんが大好きな“外出”について迫りました。

 今回は藤本さんが魂を込めた“取材活動”に迫ります!!(文責:中野)

 

☆取材再開!☆

 藤本さんは日々執筆活動に勤しまれています。

 少しでも気になることがあれば、ネットや本を通じて文献を調査し、必要な情報を求めて実際にその地に赴いて調べ物をされることも少なくありません。

 ですが、コロナ禍の中、なかなか取材に行けず、健康に気をつけつつ自粛を続けておられました。

 そしてやっと大阪府下に発令されていた緊急事態宣言と“赤信号”が解除され、肩慣らしの意味も込めて、10月の爽やかな秋晴れの空の中、住吉大社にて素敵な衣装で取材解禁されました!

 住吉大社への取材は実際に狛犬も見ることができ、充実した物になりました。

 

☆犬鳴山へ☆

 取材解禁とともに取材への熱もますます高まっていき、今のブームの“狛犬”“狼”についてさらに調べていくうちに、藤本さんはどうしても行ってみたいところが出てきました。

 その場所は…泉佐野市、和歌山県との県境にある“犬鳴山”。

 

「犬鳴山にどうしてもいってみたいんだよね」

 そう藤本さんから相談を受けたのは10月の初め。

「まず入ってくれる派遣事業所がいるか、相談してみましょう」

 そう言って派遣事業所さんに電話をかけると、ある事業所さんから快く「行けますよ!!」と返事を頂きました。

 ヘルパーさんの確保ができたので次はしおりづくり。

 朝の用意は何をするのか、どのくらいの時間がかかるのか、道中にトイレはあるのか、どんな交通機関が必要なのか…藤本さんの不安の種を一つずつ一緒に潰していき、確認した事項をリストにしてしおりを仕上げていきます。

 バスも車いす対応のバスとそうでないバスがあるので、事前にバス会社にこの日に車いすが乗りますと連絡。

 今回は福祉タクシーを使わないと山道を登るのは難しいので、福祉タクシー会社にも何件も電話かけして予約。

 体勢は万全、いざ犬鳴山へ!!!

 

☆熊取駅にて☆

 当日、電車に乗ってまず熊取駅へ。

 熊取駅でトイレに入ったところ、トイレットペーパーの位置が高く藤本さんが頭をぶつけてしまうアクシデントが発生。

 ユニバーサルトイレとはいえ、当事者が実際に使うシュミレーションができていないのでは?と思ってしまうほど不便を感じるトイレでした。

 

☆犬鳴山行きのバスで☆

 自然いっぱいの澄み切った空気を吸いながら、おしゃべりしてバスロータリーでバスを待っていると、バスが到着!

 運転手さんがバスを歩道に寄せ、スロープを出してもらい乗り込もうとしたところ、車いすスペースの場所の座席がそのままに!!

 運転手さんに「座席を上げてください」とお願いをしたところ、少しの間…があり、「ちょっと待ってね!」と笑顔で対応くださるも、座席の上げ方が分からず、なかなか座席が上がらない!

 バスの運転手さんは一生懸命対応してくださっているのですが、座席は動かず、後ろに次のバスが来てしまい渋滞状態に…?

 結局運転手さんから「このバス誰も乗らないから座席と座席の間に行ってもらってもいい?」と衝撃の一言が飛び出しました。

 ヘルパーさんは『山道を走る事、急ブレーキを踏むと車いすが前後左右に動いてしまうためリスクを伴うのではないか』と悩まれましたが、車いすをしっかり支えられることを確認して了承しました。

 

 今までの車いすスペースでは見ることのできない景色を見ながら「あれが犬鳴山かしら?」と話されると、運転手さんも「犬鳴山はまだですよ。左に曲がったら見えますよ」と観光バスに乗っているように話してくださり、景色と会話を楽しみながらバスでの時間を過ごされました。

 

☆犬鳴山到着!しかし……☆

 バスが犬鳴山に到着し、そこから福祉タクシーを待つも…今度はタクシーが来ない!

 タクシー会社に電話するも、運転手と連絡が取れず、バス停に到着してから1時間半経過。

 藤本さんと相談し、犬鳴山の登山は諦めてハイキングコースをぐるりと散歩し、予定より早く帰宅することとなりました。

 

 

 後日タクシー会社に電話で確認したところ、予約は受け付けていたが車の手配ができていなかったというタクシー会社のミスだったことがわかり、釈明と謝罪を頂きました。

 

☆旅の終わりに☆

 当日の介助に入ってくださったヘルパーさんから、お話を聞きました。

 

 バリアフリーの様でバリアがあるトイレについて、なかなか気が付かない視点だったので、とても勉強になりました。

 当日のバスに関しても、ユニバーサルデザインのバスにも拘らず、運転手さんが座席を上げたことがない、上げ方が分からないという事に驚きました。

 もっと車いすの方やいろんな障害をお持ちの方が交通機関をたくさん利用することにより、今回のように座席の上げ方に運転手さんも戸惑うことなく、障害をお持ちの方がバスに乗ることが当たり前の世の中になるのかなと感じます。

 福祉タクシーが来なかったという、本人さんの都合ではないハプニングにより、予定を変更せざるを得なかったことがとても残念です。

 もしお寺に行く道がバリアフリーだったら、福祉タクシーで働く人がたくさんいたら、今回のハプニングは起こりえなかったのだろうと感じます。

 また、ハイキングコースが寒かったのか、帰りは頻繁にお手洗いに行かれたので、各駅でトイレの場所を見ておくことが必要かなと感じました。

 

 世間で“バリアフリー”や“ユニバーサルデザイン”が謳われ、すこしずつ言葉自体は浸透しています。

 が、今回のように、バリアフリーのトイレでもトイレットペーパーの位置が健常者でも手を伸ばさないと届かない位置につけられていたり、ユニバーサルデザインのバスでも車いすの乗せ方を運転手さんが知らなかったりと、本当の意味で“バリアフリー”な世界に近づくには、まだまだ遠い壁を感じます。

 “みんなが暮らしやすい当たり前の世の中”にするためには、“ここにバリアがあるよ”“ここが壁になるよ”という気づきや発見が必要となってきます。

 気づいた上でどんどん当事者の方と一緒に動いて、声を上げて壁を壊していくことが“バリアフリー”な社会に近づく鍵となっていきます。

 今回のように色々なハプニングを“チャンス”と捉えて、世間に実際の当事者の声や姿を知ってもらうのは、“障害者が当たり前に地域で生活していく”上で大切な運動の一つなのではないでしょうか。

 

 今回は残念ながら未達成となってしまった“犬鳴山登頂”。

 行けなかったからこそ、藤本さんの思いは熱く燃えています。

「私は行くよ、どれだけ厳しい道のりだったとしてもね!!」

 

 藤本さんは犬鳴山へ登頂することができるのでしょうか?

 どんな壁が藤本さんを待ち受けているのでしょうか??

 次回、誰も分からない結末をどうぞお楽しみに…!!

 

“人生は冒険か無かの二択である”———ヘレン・ケラー

あなたもその瞬間に寄り添ってみませんか??